私が起業する前の大学生の時、“環境問題や貧困問題の課題を解決し、改善の方向へ進むにはどうすればよいか?”を考えるだけでなく、まず自らで行動しようと思い、課題解決のためのボランティアに積極的に参加していました。
活動を行う中、日本はこのまま経済大国として経済の発展を続け、そのお金を何かに投じていくというだけで、環境問題や貧困問題が根本的に改善されるのかどうか、という疑問が生まれました。
そのようなタイミングで、一緒にボランティア活動を行なっていた先輩に誘われて行った農業体験で、有機農業と出逢いました。
初めて農業を体験した際、慈受院の梶妙壽ご門跡が青空説法をされていました。
「命の種を植え育て、その育てた命を奪い、自分たちが命を繋ぎ生きている。
その奪った命に対しても責任をもった生き方をしなければならない」
私は深く感銘を受けました。
東京一極集中が進み少子高齢化で担い手がいない中では、未来世代へ残していくことを考えると持続可能ではありません。
しかし、農村にはきれいな空気、農の営みと共に生息してきた動植物、肥沃な土があり、おいしい野菜が食べられ、長い間続いてきた文化が存在し、未来世代に一番残していきたいものがあることも分かりました。
自然災害の頻度は増えており、今後増加の一途を辿る可能性が高いこと、世界の人口が増えていくにつれ資源をめぐって争いが起こり、食糧戦争が起こるかもしれないというリスクを背負った現代社会ですが、農に携わることは自分たちの存在を根底から支え、生命の源である食べ物を作っている強さを持つことができます。
今でも戦争が続く世界情勢の中で、食を自分たちでつくっていくことは 安全保障の面でも非常に重要だと確信し、有機農業の世界へ飛び込みました。
上の図は、起業当初から変わらずに使い続けている図です。
人類が直面する最大の試練であると言える課題の解決の糸口が わたしたちの命の循環の中にある営みである「農」にあると確信しつつも、私が農業をスタートした年から10年間で120万人も減少しており、2040年には約35万人にまで減少するとの推計もあります。
従来の課題であった高齢化に加え、毎年の異常気象や獣害、世界の分断化、生産・物流コストの上昇が止まらず農家は悲鳴をあげています。私たちの就農している地域でも、毎年空き農地が増え、担い手不足は深刻となっています。
しかし、都市と農村の関係性を見つめ直しながら、世界が拡大・成長依存から抜け出せない中で、 日本から「希望ある未来モデル」を示せるのではないかと考えています。
就農者を増やすことを理念に、わたしたちは、そのリーディングカンパニーとして、プレイヤーとして、走り続ける所存です。
日本農業株式会社 代表取締役
大西千晶